サージカルステンレスとは?|ピアスの「サージカルポスト」表記の意味と、金属アレルギーとの関係
朝晩だけ、風が少し変わってきました。
夏のあいだ休ませていたピアスを、そろそろ箱から出そうかという時期だと思います。
その箱の中に、去年かゆくなって外したまま戻した一組が入っている。そういう方から、ときどきお問い合わせをいただきます。
「サージカルステンレスなら大丈夫ですか」と。
この言葉、商品ページにはよく出てきます。当店の商品説明にも山ほど書いてあります。それなのに、それが何なのかを一度も説明していませんでした。
今日は、サージカルステンレスが何なのかという話と、当店の在庫を実際に数えて分かったことを書こうと思います。数えてみたら、思っていたのとは少し違う結果になりました。
サージカルステンレスは、手術の道具と同じ仲間の金属です
サージカル(surgical)は「外科の」という意味の英語です。
メスやピンセット、体の中に入れるボルトなど、手術の現場で使われるステンレスを、そう呼んでいます。
ステンレスというのは、鉄にクロムやニッケルを混ぜた合金のことです。鉄だけだとすぐ錆びますが、クロムを一定量以上混ぜると錆びにくくなります。
その中でも、体液に触れても変化しにくいように調整されたものが、医療の現場に回っている。それがアクセサリーのピアスにも使われるようになった、という順番です。
「サージカル」は、金属の名前ではありません
ここが分かりにくいところだと思います。
シルバー925なら「銀が92.5パーセント」という中身の話です。真鍮なら「銅と亜鉛の合金」という中身の話です。
サージカルは、中身の話ではありません。「そういう場所で使われている種類のもの」という、用途からきた呼び名です。
だから、法律で決まった基準があるわけでもありませんし、これを名乗るのに検査が要るわけでもありません。
その言葉が付いているだけで安心、とはならない。そこは押さえておいていただきたいところです。
素材そのものの話は シルバーアクセサリーの記事、真鍮アクセサリーの記事、ピューターの記事 にそれぞれ書いています。
錆びにくいのは、表面にうすい膜ができるからです
ステンレスが錆びにくい理由は、混ぜたクロムが空気中の酸素とくっついて、表面にごく薄い膜を作るからです。
目には見えない厚さの膜です。この膜が中の鉄を守っています。
傷が付いて膜が破れても、酸素があればまたできます。自分でふさぐ、という言い方をされます。
金属アレルギーは、金属が汗などに溶けて出たイオンが体に入ることで起きます。膜がしっかりしているぶん、溶け出す量が少ない。それが「アレルギーが起きにくい」と言われる理由です。
「316L」という番号は、当店の説明文には出てきませんでした
よそのお店の商品ページで「サージカルステンレス316L」という書き方を見たことがあるかもしれません。
316Lというのは、ステンレスの種類を表す番号です。末尾のLは炭素の量が少ないという意味で、医療用に使われるのはたいていこれです。
当店の在庫で「サージカル」と書いてある商品を全部開いて確認しましたが、316Lという番号が書かれた商品はゼロ件でした。
番号まで書かれていないから粗悪だ、という話ではありません。国内のアクセサリーブランドでは、そこまで書かない書き方のほうが普通です。
ただ、番号で選びたい方には、当店の商品ページはその情報を持っていないということになります。先にお伝えしておきます。
「アレルギーが出ない」ではなく「出にくい」という言い方になります
ステンレスにはニッケルが含まれています。
ニッケルは、金属アレルギーの原因としていちばん名前が挙がる金属です。
膜のおかげで溶け出しにくいだけで、入っていないわけではない。だから、ニッケルに強く反応する方は、サージカルステンレスでも症状が出ることがあります。
「絶対に大丈夫」と書いてあるお店があったら、そこは少し疑ってよいところだと思います。
金属アレルギーそのものの仕組みと、素材ごとの向き不向きは 金属アレルギーとアクセサリーの素材の記事 にまとめてあります。あわせて読んでいただけたらと思います。
当店で「サージカル」と書いてある商品を数えたら、266点でした
ここからが、数えた話です。
店内検索で「サージカル」を引いて、出てきた商品を一点ずつ開いて確認しました。
266点。在庫の合計は488個でした。全部が今日の時点で買える状態です。
内訳は、ルチカが182点、パルナートポックが79点、あとの5点がタリナ・カザ・そのほかです。
値段は1,540円から13,200円まで。まん中あたりは2,530円でした。
当店のピアス・イヤリングは全部で838点ありますので、そのうちの3割ほどに「サージカル」の文字が入っている、ということになります。
「ステンレス」という金属名まで書いてあるのは、82点だけでした
266点の書き方を分けてみたら、こうなりました。
「サージカルステンレス」と金属名まで書いてあるもの……82点
「サージカルポスト」とだけ書いてあるもの……66点
「ピアス金具:サージカル」のように、サージカルで止まっているもの……118点
いちばん多いのが、いちばん情報の少ない書き方でした。
「サージカル」だけだと、それは用途の呼び名なので、金属が何なのかは書かれていないことになります。業界では通じる略しかたですが、買う側からすると分かりにくいと思います。
これは当店が書き足せる部分ですので、順に直していこうと思っています。
266点に共通していたこと。サージカルステンレスなのは、ポストだけです
数えていて、いちばんはっきりしたのがこれでした。
266点すべてで、サージカルステンレスと書かれているのはポスト(耳に通る軸)か、その周りの金具の部分でした。
飾りの部分がサージカルステンレスでできている商品は、266点の中にひとつもありませんでした。
たとえばパルナートポックの「上弦下弦 ピアス」の説明はこう書いてあります。
【素材】ピューター ポスト:サージカルステンレス
写真で見ると、二つの素材が同じ一枚に写っています。

銀色にすっと伸びているのがポストとキャッチ。ここがサージカルステンレスです。
金色の月のほうがピューター。ここは別の金属です。
同じ一組の中に、まったく違う金属が入っています。
飾りの部分は、ピューターや真鍮や合金でできています
266点の素材欄に出てきた金属を数えたら、こうなりました。
合金が88点、ガラスが75点、真鍮が67点、エポキシ樹脂が64点、ピューターが58点。
ピューターは錫を主にした合金で、パルナートポックの立体的なモチーフはたいていこれです。細かい形が出せて、あとから手で色を挿せる。作家やメーカーが選んでいるのは「その形をいちばんよく出せる素材」ですので、こうなります。
真鍮は銅と亜鉛の合金です。ルチカの薄い板のモチーフによく使われています。
アレルギーの起きにくさを最優先にした素材選びには、なっていません。そこは先に申し上げておきます。
なお、266点のうち41点には「ニッケルフリー」という表記が入っていました。これは飾りの素材のほうに付いている言葉です。
見るところは「耳たぶのどこに、何が当たるか」
ここまでを踏まえると、見るところがひとつに絞れます。
ポストが通るのは、穴の中と、耳たぶの裏側です。
飾りが当たるのは、耳たぶの表側です。
つまり「サージカルステンレスのポストだから安心」というのは、穴の中と裏側の話でしかありません。表側は別の金属が当たっています。
去年かゆくなったのが穴の中だったのか、耳たぶの表側だったのか。思い出せると、次に選ぶときの手がかりになります。
穴が安定しないことのほうが気になっている方は、セカンドピアスの選び方の記事 のほうが近いと思います。
平らに乗る形と、ぶら下がる形
表側に当たる面積は、形によってずいぶん変わります。
耳たぶに平らに乗るタイプは、飾りの裏面がそのまま肌に触れます。触れている面が広いぶん、汗もたまります。

横から見ると、こうなっています。まっすぐ伸びているのがポスト。その付け根の平らな面が、耳たぶに乗ります。
ぶら下がるタイプは、上の留まる部分が小さくて、あとは耳の下に垂れます。肌に触れているのは上の小さな面だけです。
触れる面を減らしたいという意味では、ぶら下がるタイプのほうが向いています。
代わりに、動くぶん引っかかりやすくはなります。そのあたりの兼ね合いは ニットに引っかからないアクセサリーの記事 にも書きました。
キャッチもサージカルステンレス、という書き方もありました
古いほうの商品にはこういう書き方が残っています。
【素材】真鍮、(ポスト、キャッチ部分)サージカルステンレス
キャッチというのは、後ろで留める小さな部品のことです。ここも耳たぶの裏に当たりますので、書いてあると助かる情報だと思います。
キャッチは落として無くしやすい部品でもあります。付け替えの話は ピアスのキャッチの記事 のほうにまとめてあります。市販のキャッチに替えると、そこだけ別の金属になるという点も、あわせて頭に置いておいていただけたらと思います。
「サージカル」と書いていないピアスも、たくさんあります
当店のピアスは600点あまりあって、「サージカル」と書いてあるのはそのうちの4割ほどです。
残りは書いていません。
書いていない=違う素材、とは限りません。作家ものの一点ものだと、素材欄がひと言で終わっていることがあります。仕入れの資料に書かれていなくて、当店から書き足せていないものもあります。
気になる商品があって素材欄に書かれていないときは、お問い合わせいただければ確認します。答えられないときは「分かりません」とお返事します。そこを想像で埋めると、いちばん困る方に迷惑がかかりますので。
当店の素材の考えかたは 素材と金属アレルギーについて のページにまとめてあります。
イヤリングの説明に「サージカルステンレス」の行が残っていることがあります
266点のうち7点は、イヤリングでした。
イヤリングには耳に通す軸がありませんので、これは変です。
中を見てみたら、たとえばこうなっていました。
【素材】モチーフ:ピューター、金具:真鍮、シリコン
サージカルステンレス
金具は真鍮とシリコンだと書いてあって、その下に「サージカルステンレス」の行だけが残っています。同じ絵柄のピアス版と説明文を共有していて、その名残が消えていない状態です。
当店で直します。ただ、よそのお店でも同じことは起きます。イヤリングの説明に「ポスト」という言葉が出てきたら、そこはピアス版の残りかもしれない、と思って見ていただくのが安全です。
耳に穴を開けていない方のイヤリング選びは イヤリングがゆるい・落ちるときの記事 と、ピアスとイヤリングの併用の記事 のほうが役に立つと思います。
メッキがかかっているものは、肌に触れる面がメッキです
266点の中に、こういう書き方が2点ありました。
【ピアス金具】サージカルステンレスにメッキコーティング
土台はサージカルステンレスですが、上に別の金属の層が乗っています。肌に触れるのは、その層のほうです。
メッキは使ううちに減ります。減って下地が出てきた時点で、触れる金属が変わります。
色をそろえるためにメッキをかけるのは、ごく普通のことです。悪いという話ではありません。ただ「サージカルステンレスだから」と考えていると、実際に触れている面が別物だった、ということが起きます。
金色と銀色の選びかたそのものについては ゴールドとシルバーの記事 に書いています。
チタンのポストは、数えて7点でした
サージカルステンレスと並べてよく名前が出るのが、チタンです。
チタンはニッケルを含みませんので、ニッケルに反応する方にはこちらのほうが向いています。軽いという利点もあります。
当店で「チタン」と書かれたポストの商品を数えたら、7点でした。266点と比べると、ずいぶん少ない数です。
そのうち2点は、カザの「ご近所ネコさん ピアス」です。商品名のところに「(ポスト:チタン)」と入っていますので、探すときに見つけやすいと思います。

左右で絵柄の違うセットで、片方が一匹の猫、片方が二匹くっついた猫です。ゴールドが在庫3個、シルバーが在庫1個。どちらも1,870円(税込)です。
残りの5点は、いくつも入ったセットの中で「うさぎはチタン、パールはサージカル」というように分かれている商品でした。全部がチタンというわけではありません。
シルバー925のポスト、という例外もあります
シルバーの作家ものは、また事情が違います。
飾りがシルバー925で作られている商品は、ポストもキャッチもシルバー925でできていることがあります。
たとえばデコヴィーニャの「ネズミ ピアス」は、こう書いてあります。
【素材】:シルバー925 合成サファイア ポストキャッチ:シルバー925
全部が同じ金属です。飾りとポストで別の金属が当たる、ということが起きません。
シルバーは比較的アレルギーの起きにくい金属ですが、サージカルステンレスやチタンとはまったく違う金属です。銀は硫黄と反応して黒くなりますので、そこの性格も違います。
デコヴィーニャの品は DECOvienya の動物アクセサリーの記事 にまとめてあります。9,350円(税込)、在庫1個です。
お手入れのこと。錆びにくいのはポストの話です
サージカルステンレスのポストは、汗が付いても錆びにくく、放っておいてもそれほど変わりません。
飾りのほうは別です。ピューターの商品説明には、こう書かれています。
水のかかる場所、湿度の高い場所、直射日光のあたる場所での保管はお避け下さい。変色や変形、錆の原因となります。
同じ一組の中で、片方は放っておいてよくて、片方はだめ。そういう状態です。
外したら柔らかい布で軽く拭いて、乾いたところにしまう。それだけで持ちが変わります。
しまい方は アクセサリーの保管方法の記事、つけたまま寝てよいかという話は こちらの記事、香水との順番は 香水とアクセサリーの記事 にあります。
迷ったときに、私が出すとしたら
最後に、記事の中で使った品をご紹介しようと思います。
上弦下弦 ピアス(パルナートポック・2,750円税込・在庫2個)
上の写真に出てきた月のピアスです。縦約20mm×横約15mm。モチーフはピューター、ポストはサージカルステンレスと、素材欄に両方が書き分けてあります。
上弦の月と下弦の月という、本来は別の日にしか見られない二つを左右に組んだ絵柄です。月の断面が植木鉢のようになっていて、そこから緑が伸びています。月に植物は生えていませんので、これは作り手の空想です。
ぶら下がる形ではなく、耳たぶに乗る形です。触れる面を減らしたい方には、次の一点のほうが向くと思います。
チョコゴロ寝 ピアス(パルナートポック・3,080円税込・在庫2個)
縦15mm×横8mm。当店のピアスの中でも小さいほうです。チョココロネを寝袋に見立てて、中で二人が休んでいます。小さいぶん、耳たぶに当たっている面もわずかです。
ニッケルに反応するとはっきり分かっている方には、チタンのほうをおすすめします。
ご近所ネコさん ピアス(カザ・1,870円税込・ゴールド在庫3個/シルバー在庫1個)
ポストがチタンと明記されている、当店では数少ない一組です。ただし飾りのほうは真鍮と樹脂とプラパールとガラスですので、耳たぶの表側に当たるのはそちらになります。そこは正確にお伝えしておきます。
月のモチーフをもっと見たい方は 月モチーフのイヤリングの記事 もどうぞ。贈りものとして探している方は 猫モチーフのギフト記事、誕生日のギフト記事、記念日のギフト記事 をご覧ください。
▶ 「ご近所ネコさん ピアス(ゴールド・ポスト:チタン)」の商品ページはこちら
▶ 「ご近所ネコさん ピアス(シルバー・ポスト:チタン)」の商品ページはこちら
▶ 「ネズミ ピアス(デコヴィーニャ・シルバー925)」の商品ページはこちら
おわりに
数える前は、「サージカルステンレスの商品が266点もある」という話になると思っていました。
数え終わって出てきたのは、「266点すべてで、それはポストの話だった」という結果でした。
サージカルステンレスは良い素材です。錆びにくく、溶け出しにくく、値段も上がりません。ピアスの軸に使われるのは理にかなっています。
ただ、その言葉ひとつで一組ぜんぶが決まるわけではない。耳たぶの表と裏で、別の金属が当たっています。
かゆみや赤みが出たときは、いったん使うのをやめて、お医者さんにご相談ください。素材の話は、そのあとで選び直すときに使っていただけたらと思います。
気になる商品の素材欄が足りていないときは、遠慮なくお問い合わせください。分かる範囲でお調べします。